2022年第25週は森鴎外の代表作『山椒大夫』です。文庫本で数十ページの読みやすい作品です。
あらすじ
まずは山椒大夫のあらすじを紹介します。
時はヘイアン時代。小さな姉と弟がママに連れられてパパを訪ねる長い旅に出ました。姉はアンジュ、弟はズシオー。旅の途中でアンジュとズシオーは騙されて誘拐され、サンショー・ザ・ベイリフに売り払われます。ママはサド島に連れて行かれました。アンジュとズシオーはサンショウ・ザ・ベイリフのもとで児童労働させられます。強制労働の日々の中、アンジュはズシオーを脱出させる計画を立てました。ある日、アンジュはズシオーに言いました。あの遠くに見えるテンプルまで一人で走りなさい。ズシオーが神のご加護を受けているならプリーストがお前を守ってくれるでしょう。ズシオーはテンプルを目指して走りました。それを確認して、アンジュは自殺しました。
サンショウ・ザ・ベイリフはズシオーがいなくなったことに気づきテンプルまで追手をすぐに放ちます。しかし、追手に対して、プリーストはズシオーを匿ってくれました。それから、ズシオーはママとパパを探すためにまずキャピタルに向かいました。そこでプレジデントに出会いなんやかんやでプロモーションを果たし、ついにはサンショウ・ザ・ベイリフの住む地域のガバナーになりました。そして、ズシオーはサンショウ・ザ・ベイリフの下で強制労働している子どもたちを解放しました。
ズシオーは有給をとってママが暮らしているはずのサド島に向かいました。生きているか死んだかも分からないママを探して歩いていると、
「Where is Zushioh? Where is Anju? I wanna see you!」
と嘆いているオールド・ウーマンに出会いました。「この人こそが愛しのママだ」とズシオーはママに抱きつきました。ママとズシオーはそのミラキュラスなリユニオンに涙しました。
雑感
『山椒大夫』は100年ほど前の作品です。森鴎外は『高瀬舟』で安楽死を題材としていますが、本作品でも同様に社会の不条理を描きたくて、安寿と厨子王の伝説をリメイクしたのだと考えられます。
安寿と厨子王の身に誘拐、人身売買、児童労働と地獄のような困難が降りかかりますが、安寿は厨子王への愛を貫き厨子王を脱出させます。母は佐渡島で安寿・厨子王との再会をずっと祈っていました。厨子王は安寿と母の2人から深い愛を受けていたのでした。
厨子王は安寿からの無償の愛ゆえに脱出を果たしていましたが、その恩は厨子王が丹後国の国守になった後、山椒大夫のもとで強制労働していた子どもたちを解放することで恩送りされました。人身売買と強制労働が蔓延る不条理な世界にも愛が存在しそれが次世代へと引き継がれていることが描かれています。
孤独に生きるこの人生だというのに、他者から愛されるこの奇跡に乾杯。