医者が問診をするとき、どのようなポイントを意識しているかを紹介します。
問診
まずは問診の様子をご覧ください。
挨拶・本人確認
医:木務地さん、お入りください。
患:よろしくお願いします。
医:よろしくお願いします。おかけになってください。
患:はい。
医:本日、担当いたします医師の日保蔵照州(ひほくら・てす)です。確認のためお名前をフルネームでおっしゃってください。
患:木務地縮(きむち・ちじみ)です。
医:はい、木務地縮さんですね。よろしくお願いします。生年月日はいつですか。
患:1969年7月28日です。
医:すると現在は52歳ですね。
患:はい。
導入
医:これから問診をいたしますがよろしいでしょうか。
患:はい、お願いします。
医:本日はどういったことでおいでになりましたか。
患:みぞおちのあたりが痛くて来ました。
医:みぞおちが痛むのですね。その痛みについて詳しく聞かせてください。
患:半年ぐらい前からみぞおちが痛くて、吐き気や胸やけもあります。
医学的情報
医:長く続くのですね。それは大変ですね。どういった時に痛みはひどくなりますか。
患:食事の後にひどくなります。
医:そうなんですね。逆にこういうことをすると痛みが和らぐということはありますか。
患:胃薬を飲むと和らぎます。
医:何という胃薬を使っていますか?
患:ガスター10を飲んでいます。
医:どれぐらいの頻度でガスター10を飲みますか。
患:週に1、2回、痛みや胸やけがひどいときに飲みます。
医:みぞおちの痛みはどういうふうな痛みですか。
患:きりきりとした痛みです。
医:どれくらい強いですか。
患:痛みが強いときはきりきりと胃に穴が開いてしまいそうなぐらい痛いです。
医:普段の生活に差し障りがありますか。
患:仕事中に痛くなって仕事を中断してしまうことがあります。
医:それは大変ですね。痛い場所を指で指してみてください。
患:ここです。
医:肩が痛むことはありますか。
患:肩こりはあります。
医:分かりました。背中が痛むことはありますか。
患:特にありません。
医:吐き気がするとき、実際に戻してしまうことはありますか。
患:2、3回ありました。
医:お腹が張っている感じがすることはありますか。
患:時々あります。
医:食欲はありますか。
患:痛みがひどいときは食欲が無くなります。
医:血を吐いたことはありますか。
患:ありません。
医:便の色がおかしかったことはありますか。
患:いいえ。
医:頭がふらふらすることはありますか。
患:時々あります。
医:疲れやすいということはありますか。
患:最近疲れが出やすいです。
医:みぞおちの痛みは半年前から今まで強くなっていますか。変わりませんか。
患:少しずつひどくなっています。
医:痛みの場所に変わりはありませんか。
患:ありません。
医:今回の症状で他に病院は受診されましたか。
患:ここが初めてです。
心理・ 社会的情報
医:みぞおちの痛みに関係することがあるかもしれないので、木務地さんの普段の生活状況についていくつか質問させてください。
患:はい。
医:今まで何か病気になったことはありますか。
患:特にありません。
医:健診は受けられていますか。
患:会社で1年に1回受け続けています。
医:何か異常を指摘されたことはありますか。
患:貧血気味だと言われたことがあります。高血圧気味なので塩分に注意しましょうとも言われました。
医:分かりました。食べ物やお薬で何かアレルギーはありますか。
患:いいえ。特にありません。
医:胃薬のガスター10以外で何かお薬を飲まれますか。
患:コロナワクチンを受けた時、発熱の副作用が出たのでロキソニンを飲みました。
医:入院したことはありますか。
患:ありません。
医:排尿の調子はどうですか。
患:尿のきれが悪くなってきました。
医:お通じはどうですか。
患:特に問題ありません。
医:体重変化はありますか。
患:40代のときに比べて2、3キロ増えました。
医:睡眠はよくとれていますか。
患:少し眠りが浅いです。
医:家族で何か病気をされた方はいらっしゃいますか。
患:父は肺癌で現在治療中です。母は貧血と腰痛を持っています。
医:飲酒はされますか。
患:毎日缶ビールを1本飲みます。
医:喫煙はされますか。
患:しません。
医:お仕事は何をされていますか。
患:サラリーマンをしています。
医:最近、何か大きなストレスはありますか。
患:会社で大きな仕事を任されていて忙しいのがストレスです。
医:それは大変ですね。その他に最近大きな環境変化はありましたか。
患:父が入院したので面倒を見るのが少し負担になっています。
医:家族構成を教えて下さい。
患:今は妻と大学生の息子と高校生の娘と一緒に暮らしています。
医:ペットは飼っていますか。
患:いいえ。
医:最近、海外に行かれましたか。
患:いいえ。
心理的情報
医:木務地さんの現在の症状に関して、何か心配されている病気はありますか。
患:胃のあたりが痛いので胃潰瘍だとか胃がんではないかと心配しています。
医:分かりました。受けたい検査はありますか。
患:胃カメラをしてほしいです。
医:治療に関して何か希望はありますか。
患:とにかく痛いのを治してください。
医:はい。ここまでの話で何か言い忘れたことはありますか。
患:特にありません。
クロージング
医:では、最後にお聞きしたことをまとめますので確認してください。間違いや追加したいことがあれば仰ってください。
患:分かりました。
医:木務地さん、50歳男性。半年前からみぞおちの痛みがある。痛みはきりきりする痛みで食後に悪化する。胃薬を飲むと改善する。痛みは胃に穴が開いてしまいそうなぐらい強いこともあり仕事に支障をきたしている。他にお腹が張る感じや、胸やけ、吐き気、嘔吐、めまい、疲れやすさもある。血を吐くことはなく、便の色は正常。健診では貧血と高血圧を指摘された。ロキソニンを時々飲む。食欲は低下している。飲酒は毎日缶ビール1本。喫煙はしない。父は肺癌で治療中。会社で大きな仕事を任されストレス。父の面倒を見ることも負担になっている。胃潰瘍や胃がんが心配。以上でよろしいでしょうか。何か訂正や追加はありますか。
患:ありません。
医:それでは問診は以上になります。待合室でお待ち下さい。
患:ありがとうございました。
ポイント
大事なこと
- 患者の境遇に共感すること
オープニング
- 自己紹介
- 本人確認
- 生年月日
導入
- 問診の同意
- 主訴
- 主訴を詳しく
医学的情報(OPQRST + α)
- O:発症様式
- P:寛解因子・増悪因子
- Q:痛みの正常・強さ
- R:部位・放散
- S:随伴症状
- T:経過
- 日常への影響・対応・受診
周辺情報(PAM HUGS FOSS + α)
- P:既往歴・健診
- A:アレルギー
- M:服薬歴
- H:入院歴
- U:排尿
- G:排便・食欲・体重変化
- S:睡眠
- F:家族歴
- O:月経・出産歴
- S:飲酒・喫煙
- S:性交歴
- 職業・ストレス・環境変化
- ペット・海外渡航歴
心理的情報
- 解釈モデル
- 希望する検査・治療
- 言い忘れ
クロージング
- 要約
- 次の指示