今回のタイトル「PLCはPIP2をDAGとIP3に分解する」を読んで何のことだかピンと来ますか? これは細胞内の情報伝達の過程で起きる化学反応と、それを触媒する酵素の話ですね。
今回はこの反応を図解します。
PLCはリン脂質を分解する酵素の一つ
PLCはホスホリパーゼC(Phospholipase C、ホスホリパーゼC)の略です。PLCは名前の通り、リン脂質(Phospholipid)を分解する酵素です。
細胞膜に存在する膜受容体の一つに、7回膜貫通型受容体があります。7回膜貫通型受容体の一部はGqタンパク質と共役しています。この受容体にリガンドが結合するとGqがはたらいてPLCを活性化します。
PLCはリン脂質のPIP2にはたらきかける
PLCの基質はPIP2です。PIP2は「ホスファチジルイノシトール二リン酸(Phosphatidylinositol-4,5-bisphosphate)」の略です。
PIP2の構造式を図式しました。
PIP2を形作るパーツは3種類です。
紫色の二本足のパーツはジアシルグリセロール(Diacylglycerol、DAG)です。緑色の丸いパーツはリン酸(Phosphate、P)で、オレンジ色の六角形のパーツは糖のイノシトール(Inositol、I)です。
DAGはグリセロールに2つのアシル基(R-CO-)が結合した物質です。
DAGとPが結合したものはホスファチジン酸(Phosphatidic acid)と呼ばれます。
PIP2はホスファチジン酸にイノシトールが結合し、そのイノシトールに2つのリン酸が結合した構造です。
PIP2はリン脂質の一つで細胞膜に存在します。
PIP2からDAGを外すとIP3が残る
PLCはPIP2からDAGを外す反応を促進します。図のようにPIP2からDAGを外すと、イノシトールに3つのリン酸が結合した化合物が残ります。これをIP3(Inositol 1,4,5-trisphosphate、イノシトール3リン酸)と言います。
DAGとIP3のはたらき
DAGはプロテインキナーゼC(PKC)を活性化します。IP3は小胞体からCa2+を放出させます。Ca2+もPKCを活性化します。
まとめ
PLCはリン脂質のPIP2から二本足のDAGを取り外す。するとIP3が残る。IP3は糖のイノシトールに3つのリン酸が結合した物質である。