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耳鼻咽喉科 重要疾患 10選【広く浅く臨床医学】

今回は耳鼻咽喉科の重要な疾患、症候を10個取り上げる。

重要疾患

めまいと難聴の整理

めまいや難聴をきたす疾患はベン図で整理できる。

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整理

各論

1. 中耳炎

中耳炎は中耳の炎症である。中耳は外耳と鼓膜で仕切られ、耳管で咽頭鼻部とつながる。

中耳炎には急性中耳炎、慢性中耳炎、滲出性中耳炎、真珠腫性中耳炎といった疾患が含まれる。

急性中耳炎は3歳以下の乳幼児に好発し、発熱、耳痛、難聴といった症状が出る。鼓膜所見は膨隆と発赤である。治療は経過観察やアモキシリンペニシリン系)などの抗菌薬の投与、鼓膜切開術である。基本的に完治する。

滲出性中耳炎は、中耳のスペースに貯留液が見られる。中耳が陰圧になり、鼓膜所見では鼓膜の陥凹が確認できる。鼓膜可動性が不良のため、ティンパノメトリーでは主にB型であり、コンプライアンス(振動しやすさ)が低い。伝音難聴になる。耳痛などの急性炎症症状はないことが特徴。重症例では鼓膜切開術などの手術療法を選択する。

真珠腫性中耳炎は、中耳内にできた真珠腫が中耳内で骨破壊性に増殖する疾患である。伝音難聴、悪臭をもつ膿性耳漏が見られる。顔面神経麻痺が起きることがある。治療の基本は、真珠腫の摘出である。

2. 難聴

代表的な蝸牛症状である。以下のように分類される。

  • 難聴
    • 器質性難聴
      • 伝音性難聴
      • 感音性難聴
        • 内耳性(迷路性)
        • 後迷路性(中枢性)
      • 混合性難聴
    • 機能性難聴

聴覚情報は内耳の蝸牛から蝸牛神経に入りらせん神経節を通って、中枢に入る。

難聴を呈しめまいを呈さない疾患の代表例は、加齢性難聴と騒音性難聴である。

騒音性難聴は工事現場などの騒音に長期間曝露することが原因で発症する感音性難聴である。「長期間」というのがポイントである。純音聴力検査で4000Hz程度の音が聞こえにくくなること(c5 dip)が特徴である。聴力予後は不良で不可逆性である。

3. めまい

めまいは前庭の障害で生じることもあれば、脳血管障害や精神神経疾患で生じることもある。次のような分類が行われる。

  • めまい
    • 前庭性めまい
      • 末梢性
        • 回転性めまいが多い
      • 中枢性
        • 非回転性めまいが多い
    • 非前庭性めまい

難聴を伴わないめまいの代表例は良性発作性頭位めまい症(BPPV)、前庭神経炎である。

良性発作性頭位めまい症は寝返りなどの特定の頭位変換にともなうめまいである。治療は抗めまい薬を用いる対症療法、浮遊耳石置換法(Epley法など)、半規管遮断術である。

前庭神経炎は一過性の数日続く回転性めまいをきたす。治療は主に安静である。炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を投与してめまいを抑制することもある。

4. めまいと難聴の両方

めまいと難聴の両方をきたす疾患もある。たとえば、内耳全体に障害がある場合、平衡器と聴覚器に異常が生じ、めまいと難聴を呈する。

代表的な例はMénière病と突発性難聴である。

Ménière病は、蝸牛症状を伴う回転性めまい発作を繰り返す疾患である。内リンパ水腫が原因である。純音聴力検査で低音が聴こえにくいことが特徴。リクルートメント現象を呈する。内耳造影MRIで、内リンパ水腫を評価できる。静脈に造影剤を投与する。

治療は保存療法が中心だが、内リンパ嚢開放術、選択的前庭機能破壊術を行うこともある。動画はMénière病の発作(Drop attack)である。

突発性難聴は、難聴とめまいが突然発症する疾患。一過性である。治療開始が遅れると聴力予後が不良。治療はステロイド投与が一般的。

めまいと難聴の両方をきたした症例

52歳の男性。起床時に回転性めまい、左難聴および耳鳴りを自覚したため来院した。これまで同様の症状をきたしたことはなかった。身長170cm、体重72kg。体温36.5℃。尿検査と血液検査とに異常を認めない。これまで耳漏と顔面神経麻痺が出現したことはない。両側鼓膜に異常を認めない。

強い回転性めまいを反復するのはどれか。

a Ménière病

b 前庭神経炎

c 中毒性平衡障害

d 聴神経腫瘍

基底核出血

5. 副鼻腔炎

副鼻腔炎は副鼻腔(上顎洞、篩骨洞、前額洞、蝶形骨洞)で生じた炎症である。

症状は鼻閉、鼻漏、後鼻漏、頭重感などである。

発症から1か月以内なら急性副鼻腔炎、3か月以上なら慢性副鼻腔炎である。

慢性副鼻腔炎には従来型のものと好酸球性のものがある。

従来型の慢性副鼻腔炎に対しては、クラリスロマイシンなどの14員環マクロライド系抗菌薬を投与するマクロライド少量長期療法が有効である。

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クラリスロマイシン(14員環)

好酸球副鼻腔炎厚生労働省の指定難病である。鼻茸が多発する。治療として経口ステロイドの保存治療がある。

6. アレルギー鼻炎

アレルギー性鼻炎は鼻粘膜のI型アレルギー反応によって、くしゃみ、鼻漏、鼻閉をきたす疾患である。鼻鏡検査または内視鏡で鼻粘膜の蒼白、腫脹を確認する。アトピー性皮膚炎や気管支喘息を合併することが多い。検査としてたとえば鼻汁中好酸球検査を行う。

アレルゲンによって、通年性のものと季節性のものに分かれる。

原因抗原を抗原提示細胞(APC)がT細胞に提示し、T細胞はヘルパーT細胞の2(Th2細胞)に分化する。Th1細胞は細胞性免疫に関与する一方、Th2細胞は抗体産生、I型アレルギーに関与する。

Th2細胞はIL-4、IL-5を放出し、B細胞が抗原特異的なIgE抗体を産生する。IgE抗体は、肥満細胞のFc受容体(FはfragmentのF)に結合し、肥満細胞がヒスタミンを放出する。これがI型アレルギーのおおまかな流れである。

7. 扁桃疾患

扁桃の疾患の代表的なものは急性扁桃炎と扁桃周囲膿瘍である。

急性扁桃炎は小児に好発する。対症療法もしくはアモキシリン(ペニシリン系)などの抗菌薬治療が基本である。

急性扁桃炎に続発して、扁桃周囲膿瘍が生じることがある。扁桃周囲膿瘍は扁桃周囲の間隙に膿瘍を形成している。20~30代に好発する。片側性の強い咽頭痛、開口障害(牙関[がかん]緊急)をきたす。 治療は、入院と抗菌薬の全身投与と排膿(Drainage)である。排膿できない場合は膿瘍即時扁桃摘出術(Immediate abscess tonsillectomy)を行う。

8. 唾液腺炎

唾液腺炎には、流行性耳下腺炎、Sjögren症候群、IgG4関連涙腺・唾液腺炎が含まれる。

流行性耳下腺炎はおたふくかぜとも呼ばれ、ムンプスウイルス感染が原因である。

9. 咽頭

咽頭に生じる悪性腫瘍を咽頭癌と呼ぶ。発生部位により以下の3種類に分類される。

咽頭癌は嚥下時痛で発症する。中咽頭癌のうちHPV非関連癌咽頭は喫煙・飲酒がリスク因子。

2014年に日本全国で上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌と診断されたのはそれぞれ800人、1800人、1900人。

10. 喉頭

喉頭癌は喫煙者に好発。

喉頭の組織は基本的に多列線毛上皮であるが、声帯ヒダは重層扁平上皮である。喉頭癌はほとんどが重層扁平上皮癌である。これは、多列線毛上皮が加齢、喫煙により重層扁平上皮化してさらに癌化するためである。

喉頭癌は、その発生部位から声門癌、声門上癌、声門下癌に分けられる。

声門癌が最多である。声門癌はリンパ節転移がまれであることが特徴。早期から嗄声がみられる。

喉頭早期癌は放射線治療で根治可能。

進行癌で喉頭全摘術を行った場合の代用発声法としてたとえば電気喉頭(Electrolarynx)がある。電気喉頭で歌を歌う動画を発見した。

2018年に喉頭癌と診断された人は日本全国で約5000人である。

まとめ

耳鼻咽喉科領域で重要な疾患は、中耳炎(急性、慢性、滲出性真珠腫性)、Ménière病突発性難聴良性発作性頭位眩暈症(BPPV)、前庭神経炎アレルギー性鼻炎副鼻腔炎(急性、従来型の慢性、好酸球)、扁桃疾患(急性扁桃扁桃周囲膿瘍)、唾液腺炎、咽頭(上、中、下)、喉頭癌(声門癌、声門上癌、声門下癌)である。

本記事では紹介できなかったが鼻出血も重要である。Kiesselbach部位の出血は鼻翼圧迫で対応する。

耳の症候で重要なのは、めまいと難聴である。

Ménière病や突発性難聴をはじめとする内耳障害ではめまいと難聴の両方が現れる。

前庭神経炎や良性発作性頭位眩暈症といった前庭・半規管障害ではめまいのみが生じる。

一方、加齢性難聴、騒音性難聴などの蝸牛障害では、蝸牛症状(難聴、耳鳴)だけが見られる。伝音性難聴を示す疾患(急性中耳炎、滲出性中耳炎、耳垢栓塞症、外耳道狭窄、耳硬化症、真珠腫性中耳炎)でも、基本的にめまいが現れることはなく、難聴が現れる。

従来型の慢性副鼻腔炎に対する治療としてマクロライド少量長期療法がある。一方、好酸球副鼻腔炎の治療の中心は経口ステロイドである。

喫煙は咽頭癌、喉頭癌の大きなリスク因子である。

その他

  • 一列の内有毛細胞、三列の外有毛細胞
  • 乳突洞
  • 内耳神経=聴神経=第8脳神経
  • 鼻出血はアドレナリンガーゼ(α作用、血管収縮作用)で対応
  • 鼻茸は「びじょう」
  • 気管切開
  • 顎関節症
  • 側頭骨骨折のBattle徴候

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