恒星間ボトルメール

Interstellar Message in a Bottle

SLEの血液検査所見

2022年1月15日の記事で血液検査の基準値をまとめた。

emrdkn.hatenablog.com

今回はその応用編ということで、SLEの症例の血液検査所見を扱う。

SLEをはじめとする膠原病に関しては、2022年1月19日の記事を参照してほしい。

emrdkn.hatenablog.com

SLEとは

SLEは全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus)のことであり、女性に多い膠原病の一種である。

抗核抗体をはじめとする様々な自己抗体が検出される。これらの自己抗体による、全身性の慢性炎症性疾患であると考えられている。

全身症状、関節症状、腎症状、皮膚・粘膜症状、精神・神経症状といった多様な症状が現れることが特徴である。

SLEの精神・神経症状は特にNPSLE(NeuroPsychiatric syndrome of SLE)と呼ばれる。

指定難病に指定されている。

www.nanbyou.or.jp

治療法は、ステロイド薬物療法が中心である。

SLEの症例(110I47)

医師国家試験に出題されたSLEの症例をmedu4で用意した。

medu4.com

この症例の検査所見を基準値と比較した表を以下に示す。

検査項目 男女別 基準値(下限) 基準値(上限) 単位 症例 基準値との比較 病態
血液学検査 赤沈 2 10 mm/1時間
赤沈 3 15 mm/1時間
赤血球 410 610万
赤血球 380 530万 321万 汎血球減少
ヘモグロビン(Hb) 13 17 g/dL
ヘモグロビン(Hb) 11 16 g/dL 9
ヘマトクリット(Ht) 40 54
ヘマトクリット(Ht) 36 42 28
平均赤血球容積(MCV) 83 93 fL
平均赤血球ヘモグロビン量(MCH) 27 32 pg
平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC) 31 37 g/dL
網赤血球(Ret) 0.5 1.5
白血球 4,000 10,000 3000 汎血球減少
桿状核好中球 2 15
分葉核好中球 40 60
好酸球 1 5
好塩基球 0 2
単球 2 10
リンパ球 20 50
血小板 13万 35万 11万 汎血球減少
生化学検査 総蛋白(TP) 6.5 8 g/dL 7.8
アルブミン(Alb) 4.5 5.5 g/dL 2.2 ネフローゼ症候群
蛋白分画:アルブミン 61.6 71.2
蛋白分画:α1-グロブリン 1.9 3
蛋白分画:α2-グロブリン 5.3 8.9
蛋白分画:β-グロブリン 6.9 10.9
蛋白分画:γ-グロブリン 10.8 19.6
ビリルビン 0.2 1.1 mg/dL
直接ビリルビン - 0.5 mg/dL
AST 10 35 IU/L
ALT 5 40 IU/L
尿素窒素(UN) 9 20 mg/dL 30 腎症状
クレアチニン(Cr) 0.7 1.2 mg/dL
クレアチニン(Cr) 0.5 0.9 mg/dL 1.6 腎症状
尿酸(UA 3 7.7 mg/dL
尿酸(UA 2 5.5 mg/dL
随時血糖 - 139 mg/dL
免疫学検査 C反応性蛋白(CRP - 0.3 mg/dL 0.5 炎症
動脈血ガス分析 pH 7.35 7.45
PaCO2 35 45 Torr
PaO2 80 100 Torr
HCO3- 22 26 mEq/L

検査所見

赤血球、白血球、血小板の減少は汎血球減少とまとめられる。BUN(尿素窒素、Blood Urea Nitrogen)とクレアチニンが高値であるのは、腎障害の現れといえる。アルブミン低値はネフローゼ症候群を反映している。CRP高値は炎症を示す。

さらに、血清補体価の低値も特徴的である。

整理

  • 全身症状
    • 発熱
  • 眼症状
  • 皮膚・粘膜症状
    • 頬部紅斑
  • 腹部・消化器症状
  • 精神・神経症
  • 関節症状
    • 関節痛
  • 肺症状
  • 心症状
  • 腎症状
    • ループス腎炎

まとめ

今回は、医師国家試験で出題されたSLEの検査所見を基準値と比較した。汎血球減少や腎障害、ネフローゼ症候群(低アルブミン血症)、炎症所見を確認することができた。

リンク

  • ACR(アメリカリウマチ学会)のページにSLEの分類基準がリンク付けられている。

www.rheumatology.org