麻黄湯
漢方製剤の麻黄湯はキョウニン、ケイヒ、マオウ、カンゾウを配合したものである。
- キョウニン(杏仁):アンズの種の中にある仁。
- ケイヒ(桂皮):ケイの木の皮。
- マオウ(麻黄):マオウの茎を乾燥させたもの。有効成分はエフェドリン。
- カンゾウ(甘草):マメ科カンゾウの根を乾燥させたもの。有効成分はグリチルリチン。
添付文書によると、効能又は効果は、「悪寒、発熱、頭痛、腰痛、自然に汗の出ないものの次の諸症:感冒、インフルエンザ(初期のもの)、関節リウマチ、喘息、乳児の鼻閉塞、哺乳困難」である。
「自然に汗の出ないものの次の諸症」という表現が解釈しづらい。
重大な副作用
偽アルドステロン症(pseudo-hyper-aldosteronism)
グリチルリチン(甘草の有効成分)が腎尿細管の11β-HSD(HydroxySteroid Dehydrogenase, 水酸化ステロイド脱水素酵素)を抑制する。11β-HSDはステロイドホルモンの系統図において、コルチゾールをコルチゾンに変換する酵素である。
11β-HSDが抑制されると、コルチゾール(糖質コルチコイド)が増加する。コルチゾールがミネラルコルチコイド受容体に結合して、原発性アルドステロン症(PA, Primary Aldosteronism)に類似した症状が出る。PAの代表的な症状は、高血圧と低K血症である。
ミオパチー
偽アルドステロン症の低K血症の結果としてミオパチーが生じることがある。
まとめ
麻黄湯は、キョウニン、ケイヒ、マオウ、カンゾウを配合した漢方製剤である。感冒(風邪)に効能を示すとされる。
カンゾウの有効成分である、グリチルリチンが11β-HSDを抑制し、コルチゾールを増加させ、原発性アルドステロン様症状を出現させることがある。この病態を偽アルドステロン症と呼ぶ。すなわち、麻黄湯の注意すべき副作用は、偽アルドステロン症と、その症状である低K血症の結果生じるミオパチーである。
参考
- 『病みえ 』
『ツムラ麻黄湯エキス顆粒(医療用)』添付文書
ツムラ公式サイト www.tsumura.co.jp
ツムラ『麻黄湯(マオウトウ)』 www.tsumura.co.jp