宮川『基本統計学 第3版』の内容を紹介する。
2015年に本書の第4版が出版されている。
対象者・使い方
本書は統計学の基本的な内容を扱った標準的なレベルの教科書である。大学の統計学の講義(30コマ)で教科書として使用されていることも想定されている。
初学者が独学で通読するのには向いていないだろう。初学者が独学する場合は、より初学者向けの書籍や授業動画で、統計学の全体像を先につかむべきである。
本書は、式変形が丁寧に記述されている。ある程度、統計学を学んだ人が式変形をさらに詳しく学びたい場合、該当ページを読むというふうに使うことができる。
内容
章 | タイトル | keywords |
---|---|---|
1 | 平均値と分散 | 標準化変量・変動係数 |
2 | 度数分布 | ヒストグラム |
3 | 回帰と相関の分析 | 最小二乗法・決定係数と相関係数 |
4 | 確率 | 確率の公理・ベイジアン理論 |
5 | 確率変数と確率分布 | 確率分布関数・確率密度関数・期待値・分散・積率・積率母関数 |
6 | 主な確率分布 | ベルヌーイ分布・二項分布・ポワソン分布・超幾何分布・矩形分布・正規分布 |
7 | 標本分布 | 大数の法則・中心極限定理・t分布・カイ二乗分布・F分布 |
8 | 推定 | 区間推定・点推定・不偏推定量・最尤推定法 |
9 | 検定 | 検定の理論・第1種の誤り1・第2種の誤り2・帰無仮説・対立仮説・分散分析 |
10 | 回帰の推測統計理論 | 回帰パラメータ・自由度調整ずみの決定係数 |
本書は、10章に分かれている。1、2章では、高校数学Iの「データの分析」分野と共通する内容を扱う。3章は「回帰と相関の分析」であり、10章につながる内容である。
4、5、6章は標準的な確率論を扱う。確率の公理から始まり、確率変数や確率密度関数の概念を導入し、二項分布や正規分布などの代表的な確率分布を紹介する。
7章では、標本の概念が導入され、t分布、カイ自乗分布、F分布といった、標本にまつわる代表的な分布が紹介される。8章の推定と9章の検定につながる内容である。
8章では、確率密度関数が既知であるような統計量を用いて、標本から母集団のパラメータを推定する手法を学ぶ。
9章は、検定を扱う。検定は、母集団のパラメータに関する主張が妥当であるかを標本のデータを用いて調べる手法である。
まとめ
宮川『基本統計学』は、統計学の基本的な内容を扱った標準的な教科書である。統計学をある程度勉強した後に、式計算を詳しく学びたい場合に使うことができる。