恒星間ボトルメール

Interstellar Message in a Bottle

カルシウム循環

今回は人体におけるカルシウム代謝を扱います。まず人体におけるカルシウム(Ca)の主なリザーバー(保管庫)は骨と血液です。外界も大量のカルシウムのリザーバーです。

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カルシウム代謝

血中のカルシウム濃度はおおよそ10 mg/dLです。総循環血液量は約50 dLなので、血中に含まれる総カルシウム量は500 mgということになります。また、骨には1 kgのカルシウムが含まれているとされています。つまり、骨は血液に比べてはるかに大量のカルシウムを含んでいます。

 

体内と外界におけるカルシウムの流れは次の通りです。まず、食事に含まれるカルシウムが小腸を通して吸収され、血液中に入ります。血液は骨とカルシウムのやり取りをします。骨形成の過程では血液から骨にカルシウムが移り、骨吸収の過程では逆に骨から血液に移ります。血液中のカルシウムは腎臓を通して、外界に排泄されます。腎臓においてはカルシウムの血液中への再吸収も行われます。

 

体内におけるカルシウムの移動と、体内と外界の間のカルシウムの流入・流出がふだんは平衡状態に達しているおかげで、健康な人では血中カルシウム濃度が一定に保たれています。

 

日本人の食事摂取基準(2020 年版)によると、成人男性(30~49歳)のカルシウム摂取の推奨量は738 mg/日です。コップ1杯の牛乳(200 g)にはおよそ230 mgのカルシウムが含まれています。よって牛乳を3、4杯飲めば、一日のカルシウム摂取推奨量をクリアできることになります。

 

カルシウム摂取量のうち約30 %が体内に吸収されます。体内に吸収された量と、体内蓄積量・尿中排泄量・経皮的損失量の和がバランスすることによって血中カルシウム濃度が一定に保たれます。ただ、年齢や性別によって一日の摂取推奨量は異なるので注意してください。

 

次に、カルシウム循環を制御するホルモンについて見ていきます。

 

副甲状腺副甲状腺ホルモン(PTH)は、血中カルシウム濃度を上げ、血中リン濃度を下げます。

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PTH

PTHは骨と腎臓に働きかけます。PTHは骨において骨吸収を促進し、カルシウムとリンを血中に遊離させます。腎臓においてカルシムの再吸収を促進し、リンの排泄を促進します。さらに、PTHは、腎臓における活性型ビタミンDの産生も促します。

 

PTHは、11番染色体上のPTH遺伝子によってコードされるペプチドホルモンです。PTHは、骨と腎臓の標的細胞上に存在するPTH/PTHrP受容体(G蛋白共役型受容体)に結合し、主にGs蛋白/cAMP/PKA系を活性化します。

 

腎臓が産生する活性型ビタミンDは、血中カルシウム濃度と血中リン濃度の両方を上げます。

 

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活性型ビタミンD

 

活性型ビタミンDの特異的な作用は、小腸に働きかけてカルシウムとリンの吸収を促進することです。また、活性型ビタミンDは、骨吸収と骨形成の両方を促進します。さらに、腎臓でのカルシウムの再吸収も促進します。

 

今回は、体内におけるカルシウム代謝と、それに関わるホルモンを概観しました。まとめると、カルシウムの主なリザーバーは骨、血液、外界であり、PTHと活性型ビタミンDが血中カルシウム濃度を上昇させる作用をもちます。

 

本日もお読みくださりありがとうございました。