恒星間ボトルメール

Interstellar Message in a Bottle

時には起こせよパラダイムシフト

 自然科学において時代ごとに支配的な説が存在し、その説が別の説にとって代わられることで自然科学は進歩する。このような科学史の見方が、米国の科学史家トーマス・クーン(Thomas Kuhn, 1922-1996)によって提唱されました。時代ごとの支配的な説を「パラダイム」と呼び、パラダイムが別のパラダイムに取って代わられることを「パラダイムシフト」と言います。例えば、天動説から地動説への移行や、DNAの二重らせん構造の提唱がパラダイムシフトに該当するでしょう。

 

 パラダイムシフトを起こすためには何をすればいいのでしょうか。それはある種の偶然であり、セレンディピティなのでしょうか。あるいは、パラダイムシフトを起こすための方策が存在するのでしょうか。

 

 そもそも、自然科学における学説は、現実世界の一解釈に過ぎません。それゆえ、学説の更新がとどまることはなく、究極の学説が現れることもないでしょう。また、学説の更新がある時には革命的に、ある時には穏やかに行われることでしょう。それゆえ、パラダイムシフトもこれから起き続けていくことでしょう。

 

 問題は、一個人がパラダイムシフトを起こすことを目標にしてパラダイムシフトを起こすためには、何をすればよいかということです。人工知能の発展が、様々な分野に渡って革新的な影響を与えていることを考えると、パラダイムシフトはある程度の時間間隔で起きているのではないかとも考えられます。そう考えると、パラダイムシフトは個人の才覚というよりも、時代の流れによる影響が大きいということなのでしょうか。

 

 また、結局、学説は他の研究者に支持してもらえなければ支配的な学説とはみなされません。それゆえ、提唱者の発言力もパラダイムシフトを起こせるかどうかに関わってくるかもしれません。

 

 パラダイムシフトは、ある分野の内部を懸命に研究して起こせるものというよりも、別の分野の知見を輸入してくることにより、起こせるものであるのかもしれません。たとえば、体内におけるシグナル伝達物質の微妙な差異がもたらす機能の差異に関して、方言の研究が活かせるかもしれません。

 

 今回はパラダイムシフトの起こし方を考えました。人生100年、時にはパラダイムシフトを起こしたいものですね。