恒星間ボトルメール

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生化学メトロマップ

 こちらの図は生化学メトロマップです(図1)。体内で化学物質がどのように別の化学物質に変化しているかを地下鉄路線図のように表しています。図中で一本線で表されている路線はヒトが持つ経路で、二本線で表されている経路はヒトが持たない経路です。今回は、この図の中で重要な経路をいくつか紹介します。

 

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図1 生化学メトロマップ

 

(『Metabolic pathway』https://en.wikipedia.org/wiki/Metabolic_pathwayより引用)

 

 まず、解糖系と糖新生のルートを紹介します。メトロマップの中央やや左に解糖系が下向きに走っています。それと逆行するように上向きに糖新生のルートが走っています。解糖系では、炭素数6のグルコースが炭素数3のピルビン酸に分解されます。

 

 解糖系の続きは、クエン酸回路です。メトロマップ上では、解糖系の左下に楕円で示されています。ピルビン酸(炭素数3)はアセチルCoA(炭素数2)へと変換され、アセチルCoAはオキサロ酢酸(炭素数4)と結合しクエン酸(炭素数6)になり、クエン酸回路に入ります。

 

 クエン酸回路では、クエン酸の酸化により、還元型の補酵素であるNADHとFADH2が生じます。NADHとFADH2は電子伝達系に入り、ATP生産に使われます。電子伝達系はクエン酸回路の左側に矢印で示されています。

 

 以上で確認した、解糖系とクエン酸回路、電子伝達系が生化学を学ぶ上での基本骨格になります。

 

 解糖系の右上側に、解糖系の脇道としてペントースリン酸経路が紫色の楕円で示されています。解糖系の途中駅のグルコース 6-リン酸(G6P)がペントースリン酸経路に入り、NADPHとリボース 5-リン酸が産生されます。NADPHとリボース 5-リン酸はどちらも別の化学反応で使われる重要物質です。

 

 脂肪酸は、β酸化と呼ばれるルートでクエン酸回路に入ります。β酸化は解糖系の右下側に、ピンク色の楕円で書かれています。脂肪酸はβ酸化により、2炭素分ずつ短縮されます。そして最終的に偶数鎖の場合はアセチルCoA(炭素数2)になり、クエン酸回路に入ります。脂肪酸が奇数鎖の場合、脂肪酸はβ酸化により最終的にプロピオニルCoAになります。プロピオニルCoAはクエン酸回路中の一駅であるスクシニルCoAに変換され、クエン酸回路に合流します。

 

 以上で、解糖系、クエン酸回路、電子伝達系、糖新生、ペントースリン酸経路、β酸化を確認しました。その他に生化学の重要な反応経路として、ポルフィリン合成、尿素回路アミノ酸代謝ヌクレオチドのデノボ経路、ヌクレオチドのサルベージ経路、グリコーゲン合成があります。これらの経路についてもまた今度の記事で扱おうと思います。本日もお読みくださりありがとうございました。