小選挙区Xに40万人の有権者がいて,投票率は50%だったとする.立候補者は候補A,B,Cの3人である.小選挙区の定員は1人である.母比率の推定における母集団は,投票した有権者20万人ということになる.
20万人の母集団に対して出口調査によりサンプリングを行った.400人に対して出口調査を行ったとしよう.その結果,候補Aは170票,候補Bは120票,候補Cは110票を得たと分かった.出口調査の結果を見る限り候補Aがリードしているようであるが,当選確実を出すことができるのだろうか.
まず,候補Aについて考える.母集団において一人ひとりは候補Aに投票したかしていないかのいずれかである.母集団において候補Aに投票した割合がこの場合の母比率である.母比率は,投票した有権者が候補Aに投票した場合に1,しなかった場合に0とした場合の母平均である.母比率(母平均)をpとする.同様に出口調査において候補Aに投票した割合が標本比率であるが,この標本比率は候補Aに投票することを1,投票しないことを0とした場合の標本平均である.標本平均はサンプルサイズが大きいときに中心極限定理により正規分布に従うと言える.また,標本平均の期待値はp,分散はp(1-p)/400である.よって標本平均,すなわち標本比率は平均p,分散p(1-p)/400の正規分布に従う.
ここで標本比率の標準化を行う.候補Aの標本比率は0.425であるので,z = (0.425 - p) / sqrt(p(1-p)/400)により標準化ができる.危険率5%で母比率の推定を行うとき,-1.96 <= z <= 1.96とできる.これを変形して0.425 - 1.96 * sqrt(p(1-p)/400) <= p <= 0.425 + 1.96 * sqrt(p(1-p)/400)とできる.第1辺と第3辺に現れるpを0.425で置き換えて計算し,候補Aの母比率の95%信頼区間は[0.38, 0.47]と求められる.
同様に候補Bの母比率の95%信頼区間は[0.26, 0.34],候補Cの母比率の95%信頼区間は[0.23, 0.32]と分かる.
この結果から,候補Aの母比率の下限は候補B,Cの母比率の上限を上回っているため候補Aに当確を出せる.