恒星間ボトルメール

Interstellar Message in a Bottle

AとGとCとTできみをつくるDNA

 タイトルは2016年発表のやくしまるえつこ「私は人類」からの引用です。今回は混同しがちなDNA、遺伝子、染色体の意味の違いを説明します。

 まずヒトの体は数十兆個の細胞から構成されています。ひとつの細胞の中央部には核と呼ばれる構造があります。核のさらに内部には染色体が詰まっています。染色体のイメージはひもがきれいに巻かれて折りたたまれたものです。

 ひとつの細胞の中にはひとつの核があり核の中には46本の染色体が入っています。46本の染色体の内訳は次の通りです。1番染色体から22番染色体まで番号がついた常染色体22本が2本ずつと女性ならX染色体が2本の計46本です。男性の場合は常染色体44本に加えてX染色体が1本、Y染色体が1本の合計46本です。X染色体とY染色体は性染色体と呼ばれます。

 1本の染色体は実はひと連なりのDNAがきれいに巻かれて核内部に収納されたものです。DNAはポリヌクレオチド鎖と呼ばれる一本の鎖が2本より合わさって二重らせん構造をとっている有機高分子です。

 ポリヌクレオチド鎖はアデニン、グアニン、シトシン、チミンという4種類の塩基が一列に並んだ構造をしています。それぞれの塩基は順にA、G、C、Tと略されます。すなわちポリヌクレオチド鎖はA、G、C、Tという4種類の文字を使った文字列とみなせます。

 先に述べたとおり、ポリヌクレオチド鎖が2本より合わさって二重らせん構造をとった分子がDNAです。ここで重要なのが片方の鎖のAと向かい合うのが必ずもう片方の鎖のTだということです。同様にGの反対側には必ずCが向かい合います。この向かい合う2文字のペアが決まっているという関係を相補性と言います。

 ここで今までの内容をまとめると、細胞の中には染色体という構造物が入っていて染色体の主な素材はDNAという分子だということです。つまり、染色体は特定の構造をしたものである一方、DNAは染色体を形作る物質です。

 ここでDNAはATGCからなる文字列とみなすことができ、この文字列のことをDNA配列と呼びます。DNA配列の一部の領域はタンパク質の作り方を指示した設計図になります。このようにタンパク質の設計図となるようなDNA配列上の領域のことを遺伝子と言います。つまり、遺伝子はDNA配列がはたらく上での機能単位です。DNA配列上にはそのような機能単位が全部で約2万か所あります。つまり遺伝子は約2万個あります。

 以上で染色体、DNA、遺伝子がすべて登場しました。最後に今回の内容をまとめると次のようになります。染色体は細胞の核内部にある構造物であり、DNAという有機高分子からできています。DNA配列からタンパク質を作る上での機能単位が遺伝子です。