2019年7月1日の夜ウィンブルドンの決勝が行われることをたまたま知った私は、勉強しながらこの試合をテレビで観戦することにした。決勝のカードははフェデラー対ジョコビッチであった。その当時私はテニス観戦をしたことが全く無く、テニスツアーの仕組みやBIG4のメンツさえも知らなかった。たまたま観ていた試合がテニス史上屈指の名試合になるとも知らず私はポイント展開にハラハラしたり夜遅くになるにつれうつらうつらしながら勉強を進めていた。試合終盤でフェデラーは何本かマッチポイントを握り、素人が「やった、これで布団に入れる」と思ったのは糠喜びであって試合はその後もつれにもつれ第5セットの12-12にまでなった。試合を最後まで見届けることを決めていた私はただひたすら試合の早期集結を望みをうとうとしていた。そして最後にタイブレークで試合を制したのはジョコビッチであった。
私が布団に入るのを許さなかったこの試合は、しかしある種の得も言われぬ魅力で私をテニス観戦の虜にした。フェデラーやジョコビッチを始めとするBIG4が成し遂げてきたパフォーマンスがプロフェッショナリズムの極みであることを知り2019年ウィンブルドン決勝がフェデラーにとって何を意味するかを知るのはその後の話である。